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大阪地方裁判所 昭和62年(ワ)7452号 判決

原告

佐々木博明

被告

荒木茂

主文

一  被告は、原告に対し、三六一万七〇〇六円及びうち三三一万七〇〇六円に対する昭和六二年三月一七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用はこれを三分し、その二を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

三  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、一一一三万八〇四三円及びうち一〇一三万八〇四三円に対する昭和六二年三月一七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  交通事故の発生

次のとおりの交通事故(以下、「本件事故」という。)が発生した。

(一) 日時 昭和六二年三月一六日午前一時一〇分頃

(二) 場所 高槻市大蔵司一丁目四番二号先

(三) 加害車両 普通乗用自動車(登録番号、大阪五三ひ九一九五号)

(四) 態様 被告運転の加害車両が原告所有の左記建物(以下、「本件建物」という。)に突入し、その一階部分及び営業用什器などを損壊した。

高槻市大蔵司一丁目七八番地一五所在

家屋番号 七八番一五

木造瓦葺二階建居宅

床面積 一階 二三・一八平方メートル

二階 二六・四九平方メートル

2  責任原因

本件現場付近は緩やかな左カーブになつているから、自動車運転者としては、ハンドル操作を誤つて本件のような事故を起こさないように安全な速度で進行すべき注意義務があるにもかかわらず、被告はこれを怠り、時速約一〇〇キロメートルの速度で進行した過失により、ハンドル操作を誤つて本件事故を起こしたものであるから、民法七〇九条により原告の被つた後記損害を賠償する責任がある。

3  損害

(一) 建物及び什器備品等の損壊による損害 七〇二万五〇四三円

原告は、本件事故により本件建物及び右建物内部の什器備品等を損壊・破損されたため、これらの修理もしくは再調達を余儀なくされたが、これに要する費用の合計額は七〇二万五〇四三円である。その内訳は次のとおりである。なお、原告が営業に使用していた動産類については、同等の物品の購入は不可能であるうえ、原告は道路拡張工事のため、近い将来本件建物を明け渡さなければならないから、損害額の算定に当たり減価償却を考慮するのは相当でない。

(1) 建物の再建工事費 三五三万七一六八円

(2) 電気工事関係費 九四万六一〇〇円

(3) 設備機器(ガス・水道関係)工事費 二三万七七〇〇円

(4) 什器備品類

厨房器具・家具類 一七一万六五〇〇円

食器類 二七万七三五〇円

(5) 酒類、調味料類 五万九七二五円

(6) 店舗内外の装飾品(ノレン)等 二五万〇五〇〇円

(二) 店舗休業による営業損害 三一万五〇〇〇円

原告は、本件事故当時、本件建物の一階で妻とともに居酒屋店「五平」を営業し(右営業時間は、午後五時から同一一時過ぎまでである。)、一日当たり少なくとも一万五〇〇〇円の収入を得ていたところ、本件事故による建物等の損壊のため、昭和六二年三月一六日から同年四月五日まで右店舗の休業を余儀なくされた。このために原告が被つた損害額は、三一万五〇〇〇円である。

(三) 営業再開後の減収による損害 四八万円

前記期間居酒屋店を休業したため、営業再開後もなかなか顧客数が回復せず、少なくとも昭和六二年五月末日までその影響が続き、売上が減少した。この間の営業減収は四八万円である。

(四) 運送業休業による損害

原告は、前記居酒屋店を経営する傍ら、訴外北大阪運送株式会社に車を持ち込んで運送業に従事(右就労時間は午前八時三〇分から午後五時までである。)し、一日当たり少なくとも一万八〇〇〇円の収入を得ていたところ、昭和六二年三月一六日から同年四月五日までの間本件建物の改装などのため一五日間右運送業務に従事することができなかつた。このために原告が被つた損害額は、二七万円である。

(五) その他の損害(加害車両の引き出し費用等) 四万八〇〇〇円

原告は、本件建物に突入した加害車両を引き出すなどの事故後の処置のため、四万八〇〇〇円を支出した。

(六) 慰藉料 二〇〇万円

本件事故は、被告の無謀運転という一方的過失による危険な事故であり、これによつて原告らが受けた不安感は大きく、原告の妻は右事故による精神的ショックからノイローゼの症状を示しているうえ、日常生活にも多大な不便を強いられた。このように、原告らが被つた精神的苦痛は甚大であつて、これを慰藉するに足りる慰藉料の額としては、二〇〇万円が相当である。

(七) 弁護士費用 一〇〇万円

原告は本件訴訟の提起及び追行を原告訴訟代理人に委任したところ、その費用及び報酬のうち被告が負担すべき額は、一〇〇万円が相当である。

よつて、原告は被告に対し、民法七〇九条に基づき、右3の(一)ないし(七)の合計一一一三万八〇四三円及び右弁護士費用を除く一〇一三万八〇四三円に対する不法行為の後である昭和六二年三月一七日から支払いずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実のうち、加害車両の速度が約一〇〇キロメートルであつたとの点は否認するが、その余は認める。

3  同3の事実は知らない。なお、原告主張の建物及び什器備品等の損壊による損害の中には、不必要な工事による費用が含まれていたり、減価償却を全く考慮していないものであつて、相当でない。

三  抗弁

本件事故による損害については、被告から原告に対し、一〇五万円の支払いがなされている。

第三証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  本件事故の発生

請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

二  責任原因

請求原因2の事実(加害車両の時速の点を除く。)は当事者間に争いがない。そうすると、被告は民法七〇九条により、原告の被つた後記損害を賠償する責任があるというべきである。

三  損害

そこで、損害の点について検討する。

1  建物及び什器備品等の損壊による損害

弁論の全趣旨によつて真正に成立したものと認められる甲第四号証、乙第五ないし第一〇号証、成立に争いのない検乙第一ないし第二〇号証、証人木口照夫の証言及び原告本人尋問の結果によれば、次の事実が認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。

本件事故による建物等の損壊については、通し柱の切損、外壁、店舗内部、天井、カウンター、店舗内のテーブル、椅子、調理用機器、食器等に破損が見られたので、原告は各業者(建物の再建工事につき赤坂建設工業、電気工事関係につき三宅電気商会、設備機器工事につき上中産業株式会社、厨房器具・家具類につき山一商事株式会社、食器類につき日本食器株式会社)にこれらの修理及び再調達を依頼したところ、右業者は、請求原因3(一)(1)ないし(6)のとおりそれぞれ見積もつた(詳細は別紙見積額のとおり)。

日本損害保険協会の登録損害鑑定人木口照夫は、被告の加入していた大阪府共済農業協同組合連合会の鑑定依頼により、昭和六二年三月一六日に現場調査のうえ、修理内容、単価等を勘案して右見積額を別紙鑑定額のとおり合計三九〇万六〇三六円に修正した(以下、「木口鑑定」という。)。その理由は以下のとおりである。

(一)  建物の再建工事費

(1) 解体及び処分工事

右のうち、土間斫り処分については、損壊が認められず、テント(シート)処分はあえて計上するほどではなかつたので、削除した。

(2) 仮設工事

右のうち、仮設足場、仮設養生費用については、見積書記載の建物外壁四面のうちの二面に補修の必要性が認められなかつたので、これらに関する費用を半額にした。

(3) 木工工事

右のうち、柱絵、天井板及び壁プリント腰板については、原状と同等の物を前提として減額修正した。なお、クロース下地については、同様の理由で増額した。フテン合板は、原状に見当たらなかつたので、削除した。見切材は半額程度、補足材は二割程度で原状復帰が可能であり、大工は二〇人(二人で一〇日間)で足りると考えられたので、その旨修正した。

(4) アルミ建具及び木製建具工事

右のうち、窓FIX、面格子及びアルミ内窓は、原状に見当たらず、クリーニング、木製ドア、アコーデオンドアは、損壊が認められなかつたので、削除した。アルミ玄関サツシ等は原状の木製の物ですれば半額で可能なので、その旨修正した。

(5) 左官工事

右のうち、基礎モルタルについては、原状はコンクリートブロツクなので、これを前提として減額修正(見積額の六〇パーセント)した。土間モルタルについては、見積書では土間を解体して基礎をやり直すようになつているが、上塗りで足りると認められたので、右を前提として一平方メートル当たり二〇〇〇円として計算した。側溝モルタル工事については、原状では半額で足りると認められたので、その旨修正した。

(6) 基礎及び補修工事

右のうち、型枠から排水パイプまでについては、原状はコンクリートブロツクなので、これを前提として減額修正した。土間コンクリート打ちについては、損壊が認められなかつたので、削除した。

(7) 板金工事

右のうち、ホツパ、ダクトについては、損壊が認められなかつたので削除した。庇カラー鉄板については、見積書から落ちていたので、追加計上した。

(8) 吹付及び塗装工事

右のうち、庇鉄板及び面格子などについては、損壊が認められなかつたので、削除した。ウレタンタイル吹付については、原状はリシン吹付であつたので、これを前提として減額修正した。

(9) テント張替及び取付工事

見積書どおり。

(10) カウンター工事

見積書どおり。

(11) 内装工事

右のうち、クロース、カウンター壁などは新設であり、アコーデオンカーテンの損壊は認められなかつたので、削除した。

(12) 諸経費

(1)ないし(11)の五パーセントを計上した。

(二)  電気工事費

右のうち、埋込コンセント(レンジ・冷蔵庫用)、換気扇及び同上枠については、損壊が認められなかつたので、削除した。クーラー二馬力天井吊下については、室外機のみが大破していたが、古い物で室内機とセットでないと調達できない可能性があるので、全損とし、四〇パーセントの減価償却をした。クーラー一馬力壁付は天井吊下より古く、五〇パーセントの減価償却をした。

(三)  設備機器(ガス・水道関係)工事費

右のうち、流し台等の設備機器については、三〇パーセントの減価償却をした。(LPG配管工事、給排水工事等の設備工事については、見積書どおりである。)

(四)  什器備品類

(1) 厨房器具・家具類

右のうち、冷蔵庫、バツク棚、カラオケ用品及び石油ストーブについては、損壊が認められなかつたので、削除した。全損の動産(テーブル、椅子、厨房器具)については、三〇パーセントの減価償却をし、一部損壊の動産については、その程度に応じ、修理費用として見積額の一〇もしくは三〇パーセントを計上した。

(2) 食器類

柄が揃つているので、全損として扱い、五〇パーセントの減価償却した。

(五)  酒類・調味料等

右のうち、ウイスキーについては、損壊が認められなかつたので、削除した。その他については、半分程度使用していたので、見積額の五〇パーセントを計上した。

(六)  店舗内外の装飾品(ノレン)等

植木盆栽については減価償却せず、その他については、四〇パーセントの減価償却をした。

ところで、原告は、動産類について減価償却を考慮するのは相当でない旨主張するが、木口鑑定によれば、これらの中には相当古い物もふくまれていることが認められるうえ、原告本人尋問の結果によれば、これらの営業用動産については、会計処理上減価償却をしていたことが認められることなどにも照らすと、動産類の一部につき減価償却するなどして右見積額を修正した同鑑定を異とすることはできず、他にこれらの損害及びその額を認定するに足りる的確な証拠はない。そうすると、建物及び什器備品等の損壊による損害額は、三九〇万六〇三六円となる。

2  店舗休業による損害

原告本人尋問の結果によれば、原告は本件事故当時、妻とともに本件建物の一階で居酒屋店「五平」を営業していたこと、本件事故により右建物等が損壊したため、昭和六二年三月一六日から昭和六二年四月五日までの二一日間営業できなかつたことが認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。原告は、本件事故当時、右営業によつて一日少なくとも一万五〇〇〇円の収入(純利益)を得ていた旨主張し、原告本人尋問の結果中にはこれに沿う供述部分も存するが、右供述部分は推測の域を出ておらず、俄かにこれを採用することはできないというべきであり、また、乙第一二及び第一五号証には、本件事故前(前者は昭和六二年一月から、後者は昭和六一年一二月から記載されている。)の毎日の売上額の記載があるが、これとて仕入金額や経費に関する記載は全くないうえ、その記載の様式及び態様からその正確性に疑問が残るところであり、しかも、その売上の多寡は不確定要素に左右され易い面があると考えられるから、右程度の期間の売上額を基礎として営業利益を算定することも相当でないというべきである。もつとも、右本人尋問の結果によれば、原告は売上帳などに基づき所得税の青色申告をしていたことが認められるところ、弁論の全趣旨によつて真正に成立したものと認められる乙第一七号証の一、二(昭和六〇年分所得税青色申告決算書)及び同趣旨によれば、昭和六〇年分の売上額七二六万七九〇〇円から売上原価四四八万三九五三円と経費八一万六五四六円を控除した残額一九六万七四〇一円の営業利益があつたことが認められ(右決算書には税務署の受付印が押されていないうえ、原告は昭和六一年分の所得税青色申告決算書を書証として提出していないのであるが、その営業形態に鑑みると、本件事故当時においてもこの程度の収益は上げていたものと推認するのが相当である。)、この認定を覆すに足りる証拠はない。なお、原告が妻とともに居酒屋店を営業していたことは前記のとおりであるから、右店舗休業による損害額を算定するに当たつては、右収益から同号証記載の妻の専従者給与分を経費として控除するのは相当でない。そうすると、原告の店舗休業による営業損害は、次の計算式のとおり、一一万三一九二円(円以下切捨て)となる。

(計算式)

1,967,401÷365×21=113,192

3  営業再開後の減収による損害

原告は、前記居酒屋店の休業のため営業再開後も顧客が従前より減少し、少なくとも昭和六二年五月末日までその影響が続いた旨主張し、前掲乙第一二及び第一五号証、乙第一六号証の二並びに原告本人尋問の結果中には、右主張に沿う記載や供述部分が存するところ、相当期間の休業後直ちに従前どおりの売上収入を得ることが困難であることは、経験則上推認しうるところではあるが、右乙第一二、第一五号証の記載内容の正確性に疑問が残ることは前記のとおりであり、また、乙第一六号証の二には、引き続き昭和六二年八月まで売上額の大幅な減少が続いていることを示す各月ごとの売上額が記載されているところ、右は半月程度の休業による影響としては余りにも大きく、仮に右記載内容が正確なものであるとすれば、売上額の減少のすべてが本件事故によるものといいうるかどうかについて、かえつて疑問が生じるのであつて、これらの記載が本件事故後になされたものであることをも併せ考慮すると、右各証拠にもかかわらず、結局売上減少による損害については、これを認めることができず、他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。

4  運送業休業による損害

原告は、本件建物の改築のため一五日間運送業の休業を余儀なくされたとして、これによる損害を主張しているところ、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によつて真正に成立したものと認められる乙第一一号証(休業証明書)によれば、原告は、前記居酒屋店を経営する傍ら、訴外北大阪運送株式会社に車を持ち込んで運送業に従事していた(右運送業の就労時間は午前八時三〇分から午後四時半ないし五時半までであり、居酒屋店の営業時間は午後五時から午後一一時ないし一二時ころまでである。)していたこと、本件事故によつて損壊した店舗内部の片付けなどの必要があつたこと、昭和六二年三月一六日から同年四月五日までの間に一五日間右運送業を休業したことが認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。もつとも、この間業者に依頼して店舗の改築等をなし、同年四月六日から居酒屋店の営業を再開したことは前記のとおりであるうえ、この間妻の労働力も期待できたはずであるから、原告において右休業期間全部の休業を余儀なくされたとまで認めることはできない(他にこれを認めるに足りる証拠はない。)ので、これらの事実に、本件事故による建物等の損壊の程度などの諸般の事情を総合勘案すると、本件事故と相当因果関係に立つ右休業期間としては、五日間程度とみるのが相当である。

ところで、原告は、右運送業により一日当たり少なくとも一万八〇〇〇千円の収入を得ていた旨主張し、右乙第一一号証にはこれに沿う記載があるのであるが、これのみでは右金額を客観的に裏付ける証拠として不十分であるばかりか、右運送業に要する経費等も全く不明であつて、俄かにこれを採用することはできない。しかしながら、原告が本件事故当時四六歳(昭和一五年九月一〇日生)の健康な男子であつたことは、弁論の全趣旨によつて認めることができるところ、原告の右就労状況に照らすと、原告は四六歳の男子労働者の平均給与額(月額)四〇万四六〇〇円を下回らない程度の収入を上げていた(居酒屋店の営業による収入も含む。)ものと認めるのが相当であるから、右金額から右居酒屋店の営業による原告の年収一三六万七四〇一円(前記一九六万七四〇一円の営業利益から専従者給与分六〇万円を控除した残額)を基礎として、運送業休業による損害を算出すると、次の計算式のとおり四万七七七八円(円以下切捨て)となる。

(計算式)

(404,600×12-1,367,401)÷365×5=47,778

5  その他の損害(加害車両引き出し費用等)

請求原因3(五)については、これを認めるに足りる的確な証拠はない。

6  慰藉料

本件事故は店舗兼居宅として使用されている本件建物に被告運転の加害車両が突入したものであり、まかり間違えれば人命の危険も存したうえ、家庭の平穏を侵害されたことによる有形・無形の損害は、前記の財産的損害の填補のみによつては償いきれないものがあるというべきである。右のほか、証拠上認められる諸般の事情を斟酌すれば、原告が本件事故によつて受けた精神的苦痛を慰藉するに足りる慰藉料として、三〇万円を認めるのが相当である。

四  損害の填補

原告が被告から賠償金の一部として一〇五万円の支払いを受けたことは、原告において明らかに争わないので、これを自白したものとみなす。

五  弁護士費用

原告が原告訴訟代理人に本件訴訟の提起と追行を委任し、その費用及び報酬の支払いを約したことは、弁論の全趣旨によつてこれを認めることができるところ、本件事案の内容、請求額、認容額その他諸般の事情を勘案すると、本件事故と相当因果関係に立つ損害として原告が被告に請求し得る弁護士費用の額は、三〇万円とするのが相当である。

六  結論

以上の次第で、被告は原告に対し、民法七〇九条により、前記三の1ないし6の合計額から四の既払額を控除し、これに五の弁護士費用を加えた三六一万七〇〇六円及び右弁護士費用を除く三三一万七〇〇六円に対する本件事故の日の後である昭和六二年三月一七日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があり、原告の本訴請求はその限度で理由があるからこれを認容し、原告のその余の請求は失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 田邊直樹)

項目 見積額(円) 鑑定額(円)

一 建物の再建工事費 (3,537,168) (2,130,858)

1 解体及び処分工事 204,140 142,140

2 仮設工事 127,200 78,600

3 木工工事 955,820 711,230

4 アルミ建具及び木製建具工事 518,700 308,200

5 左官工事 328,688 241,018

6 基礎及び補修工事 183,200 40,000

7 板金工事 167,000 45,000

8 吹付及び塗装工事 490,000 225,000

9 テント張替及び取付工事 113,500 113,500

カウンター工事 125,170 125,170

内装工事 173,750 0

諸経費 150,000 101,000

二 電気工事費 946,100 822,400

三 設備機器(ガス・水道関係)工事費 237,700 213,500

四 什器備品類 (1,993,850) (517,365)

1 厨房器具・家具類 1,716,500 378,690

2 食器類 277,350 138,675

五 酒類・調味料等 59,725 14,013

六 店舗内外の装飾品(ノレン)等 250,500 207,900

合計 7,025,043 3,906,036

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